※今回の最高の一枚
予てより訪問を検討していた津山市を訪れた。勿論、津山城を観に、である。出雲街道を扼する要衝の地に築かれた津山城は、無名ではあるが日本有数の高石垣を今に残している。
―津山市(美作国)
山陽道の要である姫路には言わずと知れた姫路城が、山陰街道の要である鳥取には秀吉の兵糧攻めで有名な鳥取城が、それぞれ配置されている。この2城の落城は畿内侵攻の危機を生むが、中間地点である津山には出雲街道が走っており、ここを容易に進軍させるのとそうでないのとでは、因幡街道や出雲街道、山陽道の起点たる姫路城での戦闘の結末に大きな差がある。その出雲街道は松江城、米子城が抑えており、街道のほぼ中間地点にあたる津山には津山城が築かれた。
それだけに鶴山に築かれたこの城の石垣は壮大である。嘗ては61棟の櫓を有する姫路城や76棟の櫓を有する広島城をも上回る77棟の櫓が林立していたと云うが、もし現存していたならば姫路城と並び日本を代表する城郭としてその名を天下に知らしめていたのではないか、と思ってしまう程である。
今回はそんな無名の名城を隈なく巡ってみた。
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その日天気は一時小雨の曇天の予報で、現に改札口を通り外へと出ると、薄雲掛かった状態であった。
出入口を出るとロータリーには
①箕作阮甫像が有った。
②津山駅は赤瓦の小さな寄棟造の平屋で、典型的な田舎駅といった雰囲気がある。岡山県道394号線方向に向かって
③出雲街道を北上し、
③今津屋橋を渉る。
④ビルの隙間から微かに津山城が顔を覗かせているが、美作国建国1300年記念事業の一環として期間限定で建てられた発泡スチロール製の天守が無かったら先ず気付かないだろう。今津屋橋が架かる
⑤吉井川の河川敷では、何やらイベントが催されている。
後で知ったが、津山納涼ごんごまつりという地域の祭りだった様である。B'zのボーカルである稲葉浩志の出身地という縁からか、複数のアマチュアバンドらが延々とB'zの曲を歌っていたがまるで場末のカラオケ大会並みのクオリティだった。橋を渉り終えると
⑥船頭町の今津屋橋通りを北上していく事になるが、途中美味しい饅頭屋さんが在った。これについては後程紹介する事にする。
①箕作阮甫像
②津山駅
③出雲街道:今津屋橋
④今津屋橋からの眺望
⑤吉井川
⑥船頭町:今津屋橋通り
※但し①~⑤は帰りに撮影したもの ---
大手町という交叉点を右折し少し歩くと、
⑦津山観光センターが見えてくる。市内の観光マップ等のパンフレットは勿論、お土産も多く有る。また隣には食事処も在る為、観光前や帰りに食事を摂りつつ一休憩…といった事も可能であった。
観光センターの西側には津山城の登城口が在る。そこを登って行くとTVドラマ
⑧『あぐり』のロケ地にもなった三の丸の高石垣が眼前に広がる。突き当たりを右折して暫し歩くと左手に藩祖である
⑨森忠政の銅像が置かれている。森忠政と言っても恐らくピンと来ないかと思われるが、あの森蘭丸の弟と言えば驚かれるだろうか。そんな彼が13年の歳月を費やして築いた津山城の大手口にある受付を抜けて、30弱の櫓跡や20弱の門跡を中心に城内を隈無く巡ってゆく。
櫓跡に上ると180°以上に視界が開け、
⑩市街地の眺望が可能な場所も在る。然しながら何といっても圧巻なのは
⑪表中門跡の枡形を抜けると見えてくる
⑫備中櫓であろう。10年前、平成16年に復元されたこの櫓は御殿建築仕上げとなっている為、櫓の持つ無骨で簡素なイメージは当て嵌まらない。
本丸前の曲輪は断崖絶壁となっており、
⑬細い通路は木々に覆われている。だからだろうか、戦国時代の山城を訪れているかの様な雰囲気があった。然れども本丸へと続く最後の門である
⑭表鉄門はやはり威風堂々とし佇まいであり、この城の規模の大きさを再確認させられる。
本丸へ入る。嘗て
⑮本丸御殿が在った場所には草木が多い茂っている。手入れはされていないのか、或いは手入れ前なのか、何れにせよ余り城郭らしくは無い。然れども本丸内を一周する途中に在る
⑯粟積櫓跡や大戸櫓跡から市街地の眺望が出来る為、天気さえ良ければ中国山地を望める様である。
そして何と言っても今回の目的は
⑰天守台上にあがっている模擬天守である。僅か3週間足らずの期間限定である為、何としても見て置かずには居られなかったのである。
途中土砂降りの雨が降り備中櫓に避難する等のハプニングはあったが、城好きとしてはそこまでしてでも見る価値の有るものであった。
本丸を下り二の丸を歩く。備中櫓の前、開けた場所には
⑱二の丸御殿があった様であるが、残念ながら全く面影を感じる事が出来なかった。
帰りには少し気になっていた大きな建物へと向かった。実はこの建物は
⑲鶴山館と呼ばれる嘗ての藩校の建屋だった様だが、当日は美作建国1300年記念事業でナルトのスタンプラリーが行われており、その会場として使用されていた。隅っこに追いやられていた津山城に関する資料の内、
⑳城下町絵図は往時の姿を想像する際に役立つ。
城とは言えども元々は1つの山、雨宿りもしていたとは言え、4時間程の時間が掛かってしまった。
⑦津山観光センター
⑧『あぐり』ロケ地
⑨森忠政公像
⑩丹後山方面の眺望
⑩吉井川方面の眺望
⑩神奈備山方面の眺望
⑪表中門跡の枡形
⑫備中櫓
⑫備中櫓
⑫備中櫓
⑫備中櫓:室内
⑬十四番門の通路
⑭表鉄門の枡形
⑮本丸御殿跡
⑯粟積櫓からの眺望
⑯大戸櫓からの眺望
⑰天守台と模擬天守
⑱二の丸御殿跡
⑲鶴山館
⑳津山の城下町絵図
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津山城から出て昼食を摂る事にした。場所は先程紹介した津山観光センターに在る
㉑「よし乃」と言う食事処である。ホルモンうどん等のB級グルメで人気急上昇中らしいが、肉類が苦手な自分は
㉑「津山ラーメン」という如何にもご当地!な感じのラーメンを頂く事にした。今更だが、旅先では地名の付いたうどんや蕎麦、ラーメン等の麺類を頂く事が多い。これはご当地ならではのものを安価に済ます事が出来るからであり、貧乏旅行をする身には一食1,000円以上の食事は出来ない為大変ありがたい。
食事を終えると登城道を挟んで反対側に在る
㉒森本慶三記念館の外観を写真に収め、衆楽園へと向かった。
津山市役所前を通ると何やら
㉓石垣が残っている。何処のものか定かではないが、恐らく当時のものであろう。
そうこうする内に衆楽園に着いた。
㉔出入口の冠木門を潜って中へと入ると、清水が滔々と流れており、その音が非常に心地良い。出入口から池を挟んで対角線上に在る
㉕風月軒は衆楽園を象徴する建造物である。観光案内のパンフレットでは澄んだ池に映る風月軒の姿が印象的であったが、訪問時は初夏と言う事もあってか睡蓮の葉が大群生しており、その姿を拝む事は出来なかった。
池の周囲を時計回りに巡ると、左手に
㉖余芳閣と迎賓館が見えてくる。そもそも衆楽園は江戸時代に他藩・他家からの使者を謁見する為の場所として造営されたものである事から、名称的に迎賓館がその舞台だったと思われる。
春は桜、夏は睡蓮、秋は紅葉、冬は雪化粧。 きっとここを訪れる使者を喜ばせたに違いない。
更に歩を進めてゆくと、視界が一転し今度は木々が鬱蒼と覆い茂る、まるで鎮守の森の様な厳かな雰囲気に包まれる。地面には苔が生しており、可愛らしい
㉗きのこが到る所に生えていた。裏の出入口付近から池へと繋がる
㉘曲水がまた、良い味を醸し出している。その先を更に進むと陽が勢いを取り戻したかの様な開けた場所(と言うよりも元の場所)へと繋がっており、
㉙清涼軒と称する、風月軒を一回り小さくした様な建物が在る。屋根の葺き方も異なり、正直こちらは余り立派な感じがしない。近くには兼六園のものを模した徽軫灯籠が在った様だが、見つけ出せなかった。少々残念である。ただ清涼軒の周りに一匹の
㉚錦鯉が泳いでおり、その姿は中々に愛らしかった。
池の周囲を3/4周程した所に
㉕風月軒は立地しており、そこからは
㉛余芳閣や迎賓館を望む事が出来た。
集楽園を出て次の行き先を検討していた所、また大雨に見舞われた。市役所の軒下で雨宿りをして凌いでいたものの一向に止む気配が無かった為、小降りになった頃を見計らって津山観光センターへと戻る事にした。
途中立ち寄った津山文化センターからは
㉜津山城の高石垣や模擬天守を望む事が出来た他、登城口付近には趣きの有る
㉝千石坂という坂が在ったりと、雨のお陰で知る事の出来た場所も在った。
津山観光センターの東側に在る
㉞津山郷土博物館には自分の故郷である小倉の藩主であった細川忠興から贈られたという
㉟朝顔の半鐘の複製や往時の姿を忠実に再現した
㊱1/150縮尺の復元精密模型が展示されていた(但し高さは見栄えを考えて少し縮尺を変えている)。
やはり旅先では、インターネット上では余り見る事の出来ない現地の歴史を詳しく知る事が出来る為、博物館を訪れる事も楽しみの一つにしているのだが、先述の展示物は予てより見てみたかった事もあり喜びも一入だった。
㉑御食事処「よし乃」 津山ラーメン
㉒森本慶三記念館
㉓津山市役所前の石垣
㉔衆楽園出入口
㉕風月軒
㉖余芳閣と迎賓館
㉗きのこ
㉘曲水
㉙清涼軒
㉚錦鯉「大正三色」
㉛風月軒と迎賓館
㉜津山文化センター前からの眺望
㉝千石坂
㉞津山郷土博物館
㉟朝顔の半鐘(複製)と本丸瓦
㊱1/150縮尺復元精密模型
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帰り道、今津屋橋通りに在る
㊲味よし京町店という饅頭屋さんを訪れた。そこで名物である
㊳横綱饅頭を購入したのだが、丸に違い矢の家紋の焼印が施されていた。因みに横綱饅頭とは今川焼きの事であり、主に岡山県での呼び方であるそうだ。なお余談だが、自分の住む鳥取県では大判焼き等と呼ぶ。
㊲味よし京町店
㊳横綱饅頭
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そして日帰りの津山旅行を終え帰宅後、横綱饅頭を食した。それぞれ白餡と黒餡のものなのだが、どちらも美味しかった。ただ1つだけでも結構満腹になる為、2つ一気に食べたのを少し後悔する事になった。
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